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高森明勅
2011.4.3 15:12

苦難を「分かち合う」皇室

皇后陛下は、平成8年のお誕生日に際しての文書回答の中で、次のようにおっしゃっている。

「常に国民の関心の対象となっているというよりも、国の大切な折々に、この国に皇室があって良かった、と、国民が心から安堵し、喜ぶことのできる皇室でありたいと思っています」と。

その為に、普段から努めたい、とのお気持ちを、お示しになったのである。

で、今まさに「国の大切な折」。

両陛下は先頭に立って、被災地の苦難を「分かち合」っておられる。

既によく知られているだろうが、念のために若干の具体例を挙げよう。

皇居の宮殿を当分、閉鎖。

外国大使などの信任状捧呈式、閣僚などの認証式に限って、使用する。

御所でも、計画停電の対象外であるにも拘わらず、「自主停電」を実施しておられる。

那須御用邸(栃木県)の職員用浴場を避難者の為に開放。

御料牧場の卵、野菜、缶詰等を避難所に送られている。

3月16日には、ビデオメッセージを発表され、広く国民に被災地に心を寄せるよう呼びかけられたことは、印象に鮮やかだ。

30日には、東京都足立区の避難所にお出ましになり、床に膝をつかれて、全てのグループに直接、お声をかけて見舞われた。

この時、都の関係者の説明は省略し、予定時間をオーバーしてお見舞いに費やされたのは、被災者に寄せる陛下のお気持ちの端的な表れだろう。

被災地へは、1日も早く訪れたいと願っておられるが、そのことが却って現地の負担になってはならないとのお考えから、お出ましが可能になる時期を待っておられる。

なお、21日の「春分の日」、宮中では例年通り皇室の先祖祭りである春季皇霊祭が執り行われ、余震の危険もある中で、敢えてご代拝を排し、庭上という異例ながら、陛下ご自身が親しく拝礼をなさっている。

見落とせないのは、震災後も変わりなく皇居勤労奉仕が続けられていること。

奉仕団の内訳は確認していないものの、東京の人達だけとは考えにくい。

福島第一原発の事故による放射能の拡散を恐れて、著名人や外資系企業の関係者などが、続々と東京から逃げ出す中、皇居でのボランティアの清掃奉仕の為に、わざわざ各地から上京して来ているのだろう。

その奉仕団のメンバーに対し、陛下のご会釈(非公式のご引見)も平常通り行われている。

余り注目されていない事実だが、日本人の底力はこんなところにも、表れている。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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